対話の恐怖

対話の恐怖

モブが大分変。解釈下手やから違ったらごめん


今日は……いや、今日も美術館に来ていた。

暇な訳では無い。なんなら忙しいが、美術品よりもとても価値の低過ぎる用事しか無かったから。

「あ、この絵、前見た時よりも綺麗だ。」

絵は不思議だ。見る度に醜くなったように感じる人間とは違い、見るたびに綺麗になっているように見えるのだから。

「はぁ、触れてみたい。」

美しい彫刻を見てふぅと溜息をこぼす。

人の肌よりも彫刻の方が......一応やめておこう。

「はぁ......ふふ、あたらしいものだ。」

嬉しさ、そして美しさに対峙することにより発生する、底がわからない恐怖により、口調が辿々しくなってしまう。

「っと、何時もの表情。」

ペチペチと頬を叩く。

これは間抜けな見目だろう。

「は、」

急に、悪寒がする。

これはきっと本能的な恐怖だ。

足が動かず、走って逃げることすらも出来ない私の肩に、ぽんと手が置かれた。

「君、ここについては詳しいのかい?」

首だけを、回して、後ろ、肩に手をかけた人物の方を見る。とても綺麗だった。人とは思えない程に。だからこそより恐怖した。そこしれない美しさだったから、目も動かせなくなった。口で、喋らないと死んでしまう。そう思い、声を絞り出す。嘘は吐けなかった。

「わからない......けど、ずっときてるここには。」

「そこらのやつよりかは、くわしい。」

そう答えると、美しい人は満足そうに笑う。その笑顔すらも絵画のように美しいと思ってしまうのだ。恐怖心がまた、降り積もる。溢れていく。こわい、怖い、恐ろしい。意味がわからない程の暴力的な美しさに、私は惹かれた。だが、それと同時に距離を取りたいと思った。

「あんないにんでも、さがしてるのか?」

声が、震えないように話す。死にたくはない。深入りはしない。案内人を探しているのなら、違う奴のところへ案内しようと決める。

「いや、別に。君が見ているそれに興味があっただけだよ。」

と、彼は私の後ろに手を伸ばす。「美術品に触れてはいけない」と言おうか迷ったが、恐怖が勝った。

彼は美術品を持ち上げ、どこかへ去っていった。私は今、生きている。

床にへたり込み、涙を流す。

美術品以外を見て涙を流すなんて、生まれた時を除けば初めてで、私はとても混乱してしまった。

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